「地獄を見たければ、アルコール依存症者のいる家族を見よ」などという笑えない話があります。
これは、アルコール依存症は本人だけの病気ではなく、家族全体を巻き込んで苦しめるものであることを端的に表現しています。
本人が病気から回復しなければならないのは勿論ですが、実は家族もまた病気に巻き込まれて影響を受けてきました。そのために家族全体が病んだ関係になっているのです。
本人が回復への道のりに入っても、家族が病んだままでは本人の回復が進まないばかりか逆戻りしてしまうことすらあります。
家族もアルコール依存症を正しく理解し、その回復を支援しましょう。
ともに病気の回復の道を歩み、明るい家庭をつくりましょう。




知らないうちにアルコール依存症者の飲酒を助長しているのです! 
 
●あなたが本人のお酒を責めることが、さらなる飲酒の理由になっているのです。

●あなたが飲酒をやめさせようとすればするほど、逆効果で、本人は飲酒にはしるのです。

●あなたが失敗の尻ぬぐいをし、問題の解決をするかぎり、本人は自分の飲酒問題を認めようとしないのです。

●酒をやめさせよう、行動を監視しよう、酒での失敗を防ごうと干渉しすぎることが、飲酒への欲求を強めるのです 。 

《飲酒問題に家族はどう対応したらいいのでしょうか?》 
まず、アルコール依存症という病気のことがわからなければ、対応はできません。小言を言い、叱責し、泣いて怒って本人を説教しても効果はありません。 もう十分どのご家族も経験なさっているのではないでしょうか。「依存症というのはもう自分の意志の力で飲酒を止めることができない状態になっている」ということです。自分でなんとかして酒を止めようと思っていても止められない状態になっています。深く反省すればそれで酒が止まる、という段階を越えてしまっているのです。そこを理解しないと本人に飲酒の非をぶつけるだけになってしまいます。
右の図にあるように、本人と家族は2重の巻き込まれ構造に陥っていると考えられます。
本人は、自分ではもうコントロールできない酒をなんとかうまくコントロールして飲もうとしますが、うまくいきません。
次第、次第に右端にあるようなアルコールによって作られる「依存症人格」に近付いて、さらに対応が難しい人間になっていきます。
家族は「酒を止めさせよう」とあの手この手でやっきになって本人の飲酒をコントロールしようとしますが、怒っても泣いても飲酒は止まりません。「止めろ¦止めろ」と言えば言うほど本人はかたくなになっていきます。そういうことを繰り返すうちに家族は左下に列記してあるような状態に陥っていきます。この構造が依存症者と家族を苦しめていきます。
では、どうすればいいのでしょうか?
まず、第一には、家族がアルコール依存症という病気について、理解を深めることです。第二には、そのうえで本人にどういう対応をすれば効果があるのかを知って、実行することです。
一人で悩んでいるとどうしても考えが悲観的になってしまいます。
家族会に参加することで閉塞した気持ちに少しは風がとおります。いろんな話を聞くなかで知識と知恵もついてきます。
依存症は本人の自覚が簡単にはできにくい病気です。しかし、家族が依存症の特徴を理解し対応を効果的なものに変えていくことで必ず本人に変化が起こります。簡単ではありませんが、決してあきらめないことです。まずは問題解決のための第一歩を踏み出してみませんか。 





【本人の回復
断酒をスタートとして、飲酒によって失った自分自身、人間関係を素直に認め、社会性の回復を図らなければなりません。
自助グループの中で、断酒を軸とした人間の成長に努めましょう。
回復とは断酒によりバランスの取れた生活をすることです。自分自身を受け入れ、理解し、自分らしくあることを大切にしましょう。
夫として、親としての自分を振り返り自分の役割を果たしましょう。
【家族個々の回復】
飲酒に振り回された生活の苦しみを忘れることは難しいことです。
しかし、過去を変えることはできません。
被害者意識と自己憐憫はあなた自身の変化と成長を妨げます。
被害者意識も自己憐憫も結局は自己中心の産物なのです。
過去にとらわれて現在と未来を不幸にするのは惜しいことです。
アルコール問題に取り組む中で、自分を取り戻しましょう。
自分の感情、考え、都合などに眼を向け、大切にしましょう。
本人にもあなたにとっても、究極の目標は幸せになることです。
子どもたちの願いは両親が仲良く、幸せであることです。
【家族全体の回復
長年、飲酒問題で、互いに傷つけあってきました。
断酒への取り組みの中で、関係を修復する必要があります。
家族の中に小さな民主主義を持ち込みましょう。
それは、家族全員が自由平等な家庭をつくることです。
互いに自分を表現し、理解し、受け入れ、妥協点を探す作業が必要です。
家族のきずなを結び直し、家庭としてのまとまりをつくりましょう。
断酒会で本人も家族も体験談を聞き、語る中で相手を理解し受け入れます。
みんなたった1回きりの人生を生きています。お互いに大切にしましょう。 




【家族の誓い】

・私は夫(子供・妻)の酒害に巻き込まれて悩み、苦しみました。

・アルコール依存症は家族ぐるみの病気です。
 病気だから治さなければなりません。
 また治すことができます。

・これからは酒害を正しく理解し、互いに協力して心の健康を回復します。

・私は断酒会の皆様とともに、幸せになることを誓います。 
 






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